下痢

下痢について

下痢とは、便に約60~70%以上の水分量がある場合、または1日200ml以上の排便が3回以上ある場合をいいます。突然の腹痛によって起こる急性下痢と軟便や水様便が3週間以上続く慢性下痢に分けられます。下痢は、日常的に起こり得る症状です。しかし、原因は様々です。適切な治療を行うためにも、原因を特定していくことが大切です。下痢に悩まれている方は、お早めに当院までご相談ください。

下痢の症状と原因

下痢は、症状を起こす原因により、3つに分けられます。

分泌性下痢

分泌性下痢になる主な原因は、3つあります。1つ目は、小麦や魚介等の食物アレルギーによるものです。2つ目は、食あたり等によって細菌に感染した場合です。3つ目は、解熱鎮痛薬等の薬の影響により、腸粘膜に障害を起こした場合です。分泌性下痢では、腸管内の分泌液が過剰になり、下痢が引き起こします。

浸透圧系下痢

腸管内に浸透圧を上げたり、腸の外から水分を取り込もうとする成分があると、水分吸収がうまく行われません。そのため、下痢を引き起こします。浸透圧を上げるものには、マグネシウム含有製剤等の下剤やソルビトール、キシリトール等の食品やサプリメントがあります。

運動亢進性下痢

暴飲暴食や冷え、ストレス等により、自律神経のバランスが崩れ、腸の動きが過剰に亢進してしまい、便の通りすぎるスピードが速くなることで下痢になる状態です。水分の吸収が不十分になり、下痢を引き起こします。腹痛をともなう場合が多いのが特徴になります。

慢性的な下痢をともなう主な疾患

下痢をどれだけ継続するかという視点で分けると、一般に4週間以内の下痢を急性下痢と呼び、それ以上続く下痢を慢性下痢と呼びます。慢性下痢の原因は、全身的な病気の一症状や薬物の副作用による腸内の炎症があります。また、ストレスからくる神経性の場合もあります。

過敏性腸症候群

精神的ストレス等が原因になります。3ヶ月以上にわたって、月に3日以上、お腹の痛みや腹部の不快感を引き起こします。便の形状により、3つに分類されます。下痢型、便秘型、下痢と便秘が交互に起こる下痢便秘型になります。過敏性腸症候群の疑わしい症状がある場合には、当院までご相談ください。

過敏性腸症候群

潰瘍性大腸炎

大腸の粘膜に慢性的な炎症が起き、粘膜がただれたりします。また、潰瘍が多くみられるようになり、長い間、お腹の痛みや下痢が続きます。さらに、粘液や血液の混じった便がでる場合もあります。潰瘍性大腸炎の疑わしい症状がある場合には、当院までご相談ください。

潰瘍性大腸炎

クローン病

クローン病は、潰瘍性大腸炎と似たような症状がありますが、全く異なる疾患です。クローン病は、腸管の安静のための栄養療法が必要になる場合があり、必要になる治療が変わってきます。正確な診断が大切です。深刻な合併症の起こるリスクもあるため、定期的に大腸カメラを受けていただく必要があります。

クローン病

大腸がん

進行してサイズが大きくなった大腸がんにより、便の通過が妨げられると、便秘や下痢、便が細くなることがあります。早期に見つけることにより、負担の少ない治療を期待できます。大腸がんの疑わしい症状がある場合や近親者に大腸がんの方がいる場合、30歳以上の方は大腸カメラを受けることを推奨します。

大腸ポリープ

大腸ポリープは、腸のなかでイボ状に突き出た腫瘍になります。ほとんどが無症状ですが下痢や便秘、血便等がみられる場合もあります。大腸ポリープを放置してしまうと、大腸がんに進行する場合があり、注意が必要です。30歳以上の方や近親者に大腸ポリープや大腸がんの方がいる場合、疑わしい症状がある場合には大腸カメラを受けることを推奨します。

大腸ポリープ切除

下痢の検査

問診で便の色や状態、匂い、頻度、下痢になる原因をお伺いします。潰瘍性大腸炎やクローン病等、炎症性腸疾患をはじめとする大腸疾患が疑われる場合は、大腸カメラを行います。特有の病変がないかみて、疑わしい部分の組織を採って病理検査を行い、確定診断をします。当院では、内視鏡専門医が最新鋭の内視鏡システムを使い、精緻な検査を行います。鎮静剤を使用して、リラックスした状態で検査ができます。お気軽にご相談ください。

大腸カメラ

下痢の治療

脱水を起こさないように、水分摂取量等をみて、必要があれば点滴を行います。疾患によってみられる下痢の場合は、ますば、疾患に対する治療を行います。暴飲暴食等による一過性の下痢では、水分をしっかり補給することや消化しやすく、腸に負担の少ないものを控えめに食べることが大切になります。また、足や腰の辺りを冷やさないことも重要になります。

急性下痢

白湯や麦茶、湯冷まし、経口補水液等の常温または温かいものを摂ってください。嘔吐があると水分補給できないため、点滴が必要です。白粥や食パン、うどん、薄めの味噌汁、コンソメスープ、豆腐、ヨーグルト、すりおろしたリンゴ等を摂りましょう。感染性腸炎は周囲にうつすことがあるため、丁寧に手洗いしてください。また、食材を扱う仕事や医療、介護、保育等の関係者は、症状が消えて48時間経つまで仕事を休みましょう。

慢性下痢(牛乳などでお腹壊す場合)

冷たいものや刺激が強いものの摂取を控えましょう。食事は、消化しやすく栄養があるものを摂ります。ごはんやうどんも柔らかく仕上げると腸への負担が減ります。牛乳等の特定の食品を摂ると、下痢しやすい場合は、その食品を摂らないようにしましょう。香辛料やカフェイン、アルコールを控えて、消化が悪い油脂分も減らしましょう。たんぱく質は、脂肪が少なくて消化しやすい鶏ささみや白身魚、卵、豆腐、納豆等で摂りましょう。

下痢止め剤と整腸剤の役割の違い

薬は下痢の種類により使い分けます。下痢止め剤には腸管の運動を抑制する成分、腸内の細菌を殺菌する成分、荒れた粘膜を保護する収れん成分、下痢の原因物質を吸着する成分等が含まれます。原因を考えて成分を選びます。食中毒の治療で菌を排出する際には、腸管運動抑制成分の入った下痢止め剤は使用しません。一方、整腸剤には腸内の悪玉菌を抑え、善玉菌を助ける整腸生菌成分が配合されています。下痢止めと異なり、腸の調子を整える場合に選びます。